置換積分
$U$ を $\mathbb{R}^n$ 上の開集合とする。$\varphi: U \to \mathbb{R}^n$ を単射で偏微分可能で偏導関数 $\varphi_{u_1}, \cdots, \varphi_{u_n}$ が連続で任意の $\mathbf{u} \in U$ においてヤコビアン ${\rm det} (D \varphi)(\mathbf{u})$ が $0$ でない関数とする。
$$
(v_1,\cdots,v_n) = \varphi(u_1,\cdots,u_n)
$$
$$
{\rm det} (D \varphi)(\mathbf{u}) = \begin{vmatrix}
\frac{\partial \varphi_1(\mathbf{u})}{\partial u_1} & \cdots & \frac{\partial \varphi_1(\mathbf{u})}{\partial u_n} \\
\vdots & \ddots & \vdots \\
\frac{\partial \varphi_n(\mathbf{u})}{\partial u_1} & \cdots & \frac{\partial \varphi_n(\mathbf{u})}{\partial u_n} \\
\end{vmatrix}
$$
このとき、連続関数 $f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}$ が ${\rm supp}(f) \subset \varphi(U)$ であるならば以下が成り立つ [1]。
$$
\int_{\varphi(U)}f(\mathbf{v})d\mathbf{v} = \int_U f\bigl( \varphi(\mathbf{u}) \bigr) \bigl| {\rm det} (D \varphi)(\mathbf{u}) \bigr|d\mathbf{u}
\tag{1}
$$
ところで統計学においては、確率密度関数が $f(\mathbf{v})$ である確率ベクトル $\mathbf{v}$ を $\mathbf{u} = \psi(\mathbf{v})$ と変換したときの変換後の確率密度関数 $g(\mathbf{u})$ を知りたいことがある。この変換 $\psi$ が逆関数 $\varphi$ をもち、かつ $\varphi, \, f$ が上記の条件を満たすならば、$(1)$ より $g(\mathbf{u})$ は以下となることがわかる。
$$
g(\mathbf{u}) = f\bigl( \varphi(\mathbf{u}) \bigr) \bigl| {\rm det} (D \varphi)(\mathbf{u}) \bigr|
$$
例えば標準正規分布にしたがう $v$ を $u = 2v$ と変換しよう。このとき $\varphi(u) = u/2$ になり、$g(u)$ は分散が $2^2$ の正規分布の確率密度関数になる。$\bigl| {\rm det} (D \varphi)(\mathbf{u}) \bigr|$ に相当する $|1/2|$ を乗じなければ確率密度関数の積分が $2$ になってしまうことがわかる。
$$
g(u) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \exp \left( - \frac{(u/2)^2}{2}\right) \left| \frac{1}{2} \right|
= \frac{1}{\sqrt{2\pi 2^2}} \exp \left( - \frac{u^2}{2\cdot 2^2}\right)
$$
このとき、元の確率変数 $v$ を $U$ からやってきたものと考えている。
参考文献
- Integration by substitution - Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Integration_by_substitution#Substitution_for_multiple_variables(2022年4月4日参照).
- 重積分の置換積分について成り立つ定理がある。